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トリアナちゃんのおすすめ小説 Vol.01(京極夏彦 百鬼夜行シリーズ)

2020.1.29 トリアナちゃんのおすすめ小説 Vol.01(京極夏彦 百鬼夜行シリーズ)
「この世には不思議なことなど何もないのだよ」
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トリアナちゃんの中の人

2020年最初のトリアナちゃんのおすすめコミックは「出張・小説版」にてお送りします。
第一回目は京極夏彦氏の百鬼夜行シリーズをご紹介。

今日の1冊

トリアナちゃんの今日の1冊

デビュー作にしてシリーズ第1弾の『姑獲鳥の夏』は1994年に講談社ノベルスから発表。
アートディレクターとして働いていた京極氏が仕事の合間に執筆した小説を講談社へ送ったところ即日書籍化・デビューが決定し、これを機にメフィスト賞が創設されました。
(メフィスト賞の受賞作家は森博嗣氏、新堂冬樹氏、高田崇史氏、西尾維新氏等、著名な作家が名を連ねています。)

百鬼夜行シリーズのあらすじ

百鬼夜行シリーズは第二次世界大戦後まもない昭和27年頃の日本を舞台とした推理小説。
個々の作品のタイトルには必ず妖怪の名が冠せられており、その妖怪に関連して起こる様々な奇怪な事件を「京極堂」こと中禅寺秋彦が「憑き物落とし」として解決する様を描きます。
推理小説にカテゴライズされていますが、いわゆる犯行トリックの解明や犯人当てよりも、事件そのものの全容と因果関係・事件関係者達の妄念を京極堂が論理的に究明し登場人物へ解を与える=「憑き物落とし」という独特のスタンスを取っています。
京極氏といえば水木しげる氏の熱狂的ファンであり、妖怪研究家。
作品内にはタイトルとなった妖怪に関するあらゆるキーワードが散りばめられており、口碑伝承、民俗学、論理学など広範にわたる様々な視点から妖怪の成り立ちが分析されています。この薀蓄もシリーズの特徴。

「この世には不思議なことなど何もないのだよ」

妖怪、憑き物落としといったワードが出てきますが、京極堂の台詞にも表される通り超常能力などはなく、骨格は論理的な謎解きに徹しています。

百鬼夜行シリーズの魅力

シリーズ1作目の『姑獲鳥の夏』の導入

「二十箇月もの間子供を身籠っていることができると思うか」

初読時、この台詞から一気に物語に引き込まれました。
圧倒的な筆力と膨大な知識量、重厚な文章によって作り上げられた独自の世界観。
第二次大戦直後の混沌の中、現在ほど科学的なものが確立されておらず、まだ迷信も残っている時代。そんな中巻き起こる奇怪な出来事を京極堂が解き明かしていきます。

登場するキャラクターも魅力的。
古本屋を営む「京極堂」こと中禅寺秋彦は武蔵晴明神社の宮司にして陰陽師、副業として憑物落としの拝み屋。古本屋を開業する前は高校教師でしたが「好きなだけ本が読める」という理由から転職するほど重度の書痴でもあり、家屋敷から店舗に至るまで本で溢れています。常に和装で終始不機嫌な仏頂面をしており、顔つきは「凶悪」と称されます。宗教、口碑伝承、民俗学、妖怪等に造詣が深く、知識と理を尊んで根拠のないことは語りません。百鬼夜行シリーズの本が厚くなる原因は主に京極堂の薀蓄。でもこれがないとシリーズを読んだ気がしない。

京極氏の本の何が特徴って、厚い。レンガ本。サイコロ本。文庫本が直立するって。書店でも明らかに並びの厚みがおかしい。カバーが足りない。腕が吊る。
トリアナちゃんのおすすめ小説 Vol.01(京極夏彦 百鬼夜行シリーズ)
でも一度シリーズにハマったが最後、この厚さが愛おしくなります。
氏の他作では巷説百物語シリーズやどすこいのようなコメディも面白いですが、まずは百鬼夜行シリーズをおすすめしたい。

長編

  • 姑獲鳥の夏(1994年)
  • 魍魎の匣(1995年)
  • 狂骨の夢(1995年)
  • 鉄鼠の檻(1996年)
  • 絡新婦の理(1996年)
  • 塗仏の宴 宴の支度(1998年)
  • 塗仏の宴 宴の始末(1998年)
  • 陰摩羅鬼の瑕(2003年)
  • 邪魅の雫(2006年)
  • 今昔百鬼拾遺 鬼(2019年)
  • 今昔百鬼拾遺 河童(2019年)
  • 今昔百鬼拾遺 天狗(2019年)

短編集

  • 百鬼夜行――陰(1999年)
  • 百器徒然袋――雨(1999年)
  • 今昔続百鬼――雲(2001年)
  • 百器徒然袋――風(2004年)
  • 百鬼夜行――陽(2012年)

と刊行されています。基本的には上から順に進めていけばよろしいと思います。

2019年の今昔百鬼拾遺3作は講談社、角川、新潮と出版社をまたいで連続刊行されるという異例の発売でした。
長編のくくりですが京極氏であればまとめて1冊で出版してもいいぐらいの厚さなので(つまりは常識的な文庫本の厚み)複数の出版社から分冊で出たことに大人の事情があるのかな?とも思いますが、シリーズ新作が中々出なかったのでウッカリ見逃してました。不覚。これから読みます。楽しみ。
2008年以来情報が途絶えている長編新作予定の「鵼の碑」も待機中。

トリアナちゃんの推し

京極堂の旧制高等学校の一期先輩である「薔薇十字探偵社」の私立探偵、榎木津礼二郎。
ビスクドールと称されるほどの眉目秀麗さに加え、頭脳明晰、運動神経もよく喧嘩も強いうえ旧華族の生まれ、戦時は海軍将校で剃刀と渾名されるほどの名将だったと一見非の打ち所のない人物ですが、傍若無人に振る舞い、他人を下僕として扱い自らを「神」と豪語するなど、美点を全てマイナスに振り切るほどの変人であり、とても奇矯な性格をしています。しかし親しい関係者を「下僕」と称しつつも内心は信頼して友情を大切にしている部分もあったりと、大変に魅力的。
短編集の「百器徒然袋――雨」と「百器徒然袋――風」は榎木津が主人公のスピンオフであり、本編よりもコミカルな描写で痛快。彼の魅力がよくわかるので本編を読破したら是非とも読んでほしい作品です。
苦手なものは口の中の水分を持っていかれるモサモサしたお菓子とカマドウマ。

パッサパサだよまりこちゃん
( ˘ω˘ )。oO( そういえば社内にまりこちゃんが複数 )

最後に、デザイナー・装幀家の顔も持つ京極氏の誌面への有名な拘りをご紹介。
「一つの文がページをまたがることのないように、ページ・見開きの末文で改行するよう構成する」ルールを遵守しており、InDesignを用いて自らがレイアウトまで行っています。文庫化などで行数・文字数等が変わると適宜調整を入れ、場合によっては加筆修正も行うという徹底っぷり。あのサイコロ本でそれをやるとは気が遠くなりそうな作業ですね…
ご本人はデザイナーとしてというよりはリーダビリティを考慮した読者サービスの一環であると語っているそうですが、その拘りと著作のページ数の膨大さゆえに、重版の際の『#2019アドビ令和の変』の影響がとても気になっております。

それはでは次回のトリアナちゃんも是非見てください( * ´༥` * )

記事を書いた人

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トリアナちゃんの中の人 チーフフロントエンドエンジニア

漫画と食べ物が好きです。業務はコーディングが多いですがレアな切り抜き作業が一番好きです。

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